step 第一章「謎の倉庫街」第三話
時代は手足の付いたメカメカしい家政婦ロボットが、世に出回ってきているころです。
「ゲンさま、朝ですよ」
ゲンを起こす、キー。
「うっ、あ、おはよう」
目をこすりながら、キーの方向を見た。
ゲンは、ふとんの真中でキチンした姿勢で寝ていた。
「腹、減ったー」ゲンは、おもわず声を出してしまう。
「ゆうべも、マニアルを読みながらカップメンしか食ってないもんなー」
「今日は何を、おかずにしようかなー。こういう時、親がいればなー」
(ゲンは、この部屋を一人で使っているのだが、正確的には一人暮らしでもない。
親は、このアパートのオナーで、他の部屋に住んでいる。しかし旅行好きなため、ほとんど帰ってこない)
そこにバターを炒める、良い香りと、炒める時のリズミカルな音が聞こえてきた。
ゲンは、キーの邪魔になってはいけないと、たぬきねいりをきめた。
「出来ましたよー」とキーが声をかけた。
素早く、ふとんをかたづけて、お膳を出だすゲン。
笑顔でお皿を運ぶキー。
目に笑みを浮かべるゲンだったが、
持ってきた料理?を見て、
声を張り上げた「なんだ?皿だけじゃないかー」と怒るゲン
「そんなー、一生懸命に作ったんですけどー」こまった顔をするキー
ゲンは腕を組んで考えたー。そうか!
「この真中にあるバターの溶けた汁が乗っている皿は、フレンチトーストだ。
パンが無かったから、こうなったんだ。焼けたベーコンはハムエッグだ、
卵を買って無かったもんなー。ドレッシングだけの皿はサラダかー。
何も乗っていない皿もある〜おまけにコーヒーも、ただのお湯だ」ゲンは、うつむくと、どう対処しよいか
いろいろなシュミレージョンを考えたのだが、それよりも、
「腹、減ったー」大の字になり後ろに倒れた、空腹に勝てなかった。
その体制で時計を見た「まだ、学校に行ける時間だ」
「学校に行くか!」。気を取り直して、シャツとズボンを着替えた。
キーがゲンに聞く「私の料理だめだったんですか?」
少し、こまるゲン「少し素材が足りなかっただけだよ」と答えた後。キーをどうするか考えたが、
答えが出るはずも無く、学校に連れて行く事もできないので、
「キーここでじっとしているんだぞ、外にも出ちゃだめだ」とキーに言い聞かせた。
ションボリするキー。
「それじゃ、学校に行ってくるから。そんなにションボリするなって、時期に帰ってくるって」
キーは、ゆっくりと顔を上げ、「いってらっしゃい」と言ってくれた。
そして、愛用のNEWロラースルーで、駅へ急いだ。
(今はキックボートとか乗っていますが、キックボートという商品名のものは、
たしか3輪だから正確的には、違うんだけどね。こちらは、コンパクトに折りたためるのが受けているのかな?
昔、昭和50年ころにはホンダから発売されたロラースルーGOGOというのがあったんです。
今となっては、知らない人が多いかもしれませんね。ハンドル付きのボードの元祖でありながら、
キックペダルが付いていて踏み込むと走る仕組みで、そこそこのスピードが出たはず。
それにエンジン付きのものまで発売されている。この二つのメリットをあわせもったものが、
この時代にはNEWロラースルーとして売られているんです。
おまけに各駅に設置してあり、乗り捨て可能になっていて、自転車公害の要として、十分役割をはたしていた。
愛用の物であればラッシュの時でも乗る前に、どの駅まで運んでくれと預ければ、その電車で目的の駅で降ろすという
サービスも整備されていた。)
しかし駅との間には、あの交番がある。ゲンは恐る恐る交番を覗いたがこれという、変わった気配はなかった。
ので、安心してコンビニでパンを調達した。授業前に食べるつもりだ。
電車に乗り学校近くの駅で降りて、学校に向かった。
教室でパンを食っていると、ヨシユキが声をかけた。「よっ、よーやく、お出ましか?」
それに答えるゲン「あれから本当に散々なめにあったんだぞ!」
ヨシユキの耳を引っ張り、口を近づけてゲンは言った
「ふつう高一に酒を飲ますかー、昨日も飲んだんじゃねーのか?少し匂うぞ」
ヨシユキもゲンの耳元で、
「うるせーなー、昨日は飲んでねーよ、のんベーと暮らしてんだから仕方ないだろー」
そして授業が始まった。午前中の授業を終えると、ゲンは学食に行った。
トレーにカレーをのせ、席を探すと。
そこにはマサオが居た。「まだ、生きていたのか?」と声をかけるマサオ。
「ええ、なんとか生きてますよ」と答えるゲン、
「ちょっと、こっちにこいや、いいもの見せるから」てまねきするマサオ。
「えっ、なんです?」マサオの前に座るゲン。
マサオはモバイルパソコンを取り出した。
例の倉庫の件の記事にアクセスして見せ、ゲンの耳にイヤホンを刺した。
「東京湾を完全に埋め立てるという、ネオ東京建設計画に反対する、過激派による爆発予告を表明した事にともない。
軍による警備もむなしく、倉庫街の一部が爆破するという惨事をおこした事に対し、
軍の発表によれば、より強固な手段をもってこれに対処するとの発表がありました。」と、イヤホンにながれた。
「だそうだ」目を閉じて、あきれるマサオ。
すると、「おまえ達、無事でよかった」と声をかけながらシュンが来た。
パソコンのモニターを見ると「謎が多いいよなー、この発表だって一部の局だけしか流れていないし、
騒ぎを起こしたくないのは解るが、あまりに周到すぎるきがする。もう、あの倉庫には近づく事もできないよ」
とシュンは語った。
「また、あの倉庫街に行ったんですか」と驚くゲン。
「ああ、すごい、警戒網だったよ」とシュンが返した。
「どっちにしろ、問題は解決したんじゃねーか」というマサオ。
「どうして?」問い掛けるゲン。
「なにしろ、俺様がキッチリとあいつらに話を付けたおかげよー。俺たちが何をしに来たのか、
無実であることも照明してやったのさ。おまけに、俺たちの楽器もとりかえしてやったのよ」
「なぜか、おまえのは取替えせなかったけどよ。ガッハハハ」とエバリちらすマサオ。
「結局あの時、捕まっただけだろ。まっ、結果的にはそっちの方がよかったが」冷静に言うシュン
「俺のベースは、取り返したよ」とポツリというゲン。
「どうやってだよ?」ビックリするマサオ。
「届けてくれたんだよ」と答えるゲン。
「そうか、あれから見つかったんだ、やっぱり俺様のおかげじゃないかー感謝しろよ」
その後、いろいろ話して飯を食べた。しかし、ゲンからキーの話は出る事はなかった。

午後の授業を終えて、学校帰りのゲンの足取りは軽かった。心配事がかなり、減ったからだ。
しかし部屋の近くに行くと、一気に気が沈んだ。「大掃除もやらないと…」
玄関を開けると、部屋は見違えるようになっていた。ドアも直っている。
「おかえりなさい」とキーが居た。「ただいま」と答えるゲン。
ゲンが学校に行っている間に、キーが片付けてくれたのである。部屋の中央に有るお膳の所に座った。
気がしずまった。「ハイッどうぞ」お茶を出すキー。ゲンは両手で茶碗を持ち、ゆっくりとお茶をすすった。
すこし、渋めだったが気にならなかった。ゆっくりと部屋を見渡す。
「ありゃ、あまりにサッ風景だ」台所に居るキーの所に行き、
「キー、棚の上にあった、おき物はどうしたんだ?」と、聞いた。
キーはゲンの目を見ようとはしない。キーの目線の先にはゴミ袋があった。
ゲンは「まさか!袋の中を見た。
中にはかなりの数の皿や、おき物や、ゲーム機まで入っていた。
「キーの奴ー」ゲンも、さすがにキレタ。
「どうしてくれるだ!!」手をかざすゲン。
ゲンが一歩踏み込むと、キーは、おもわず部屋の奥へ逃げた。
追いかけるゲン。それを見て逃げるキー。
お膳を中心にグルグル回り追いかけっこをする二人。
目が回る〜。「ちょっと、止まれー」と、おもわずゲンは声を張り上げた。
「ハイッ」と言って、突然とまるキー。
ゲンは止まりきれずにキーの後に向けて、おもっきりぶつかって倒れた。
キーにおいかぶさるゲン。
ゲンは怒るのを忘れ、おもわず笑い転げるのだった。


筆者:佐藤 和芳


コメント、
本文の中のローラスルーの説明がひつこすぎたかな?
悲劇的な最後で終わってしまいましたが、ローラスルーGOGOは、ホンダのすごい発明だと思います。