step 第一話
時代は手足の付いたメカメカしい家政婦ロボットが、世に出回ってきているころです。

「ゲン、何ぼーと、眺めているんだ」
アキに、なげやりな、口調で声をかけられる。
「アキか」一瞬、目を向けるが、また外を眺める。
「アキか、じゃないわよ、似合わないんだよ!」
アキがゲンの首を腕でつかみ上げた。
アキとゲンは幼馴染で、アキは一つ年上なので弟のようにゲンを思っていた。
バンドを組んでいるのだが、ゲンの高校入学そうそう、
クラブ活動だと偽って、悪の道?に引き込んだのもアキである。
「イテテテッ、ちょっとまて!本気でしめるかー!」
そこに、マサオが現れた。
「いつもの事だが、騒がしいなー。恥ずかしくないのか?」
白一色にまとめた服装を着ている。はたから見れば、一番はずかしい格好である。
ギターを、かついでいるのだが、ギターケースまで、白。
「なんだ、おまえ達の格好は?ゲンは学生服じゃねーか!」
ゲンが、こまったように言い訳をする。
「しょうがねーだろ、学校帰りなんだから」
マサオ
「バンドマンのプライドがなってねーだよ」
アキがあきれた口調で、
「あんたよりましだわ」と、
マサオの下から上へと、目線を動かしながら言い放った。
アキの服装は黒ジーンズを基本にしていて、コスチュームとしては、
かなり地味だが、それなりに着こなしていた。
マサオは話をそらす。
「なんで、こんな所で待ち合わせなんだー?
馬鹿と煙は高いところが好きてところか」
直後に声が聞こえる。
「悪かったなー」
バンドのリーダーであり、ヴォーカルのシュンである。
「ここが、気に入ってんだよ。」
ネストタワー、東京湾を一望できる100階を越える高層物である。
この時代の東京湾は、今よりズーと綺麗になっていて、
展望台では、すばらしい近代的な景観を見る事が出来るのである。
過去に湾の埋め立ての方針を改め、元々、持っていた湾の水はけの良さを、
最大限に引き出す対策がとられ、徐々にではあるが、美しさを取り戻しているのである。
「さっ、行くか!」
シュンが居ると、不陰気が変わる。美形であることに加え、高3とは思えない落ち着きを持っていた。
ちなみに服装はティーシャツと皮のパンツという感じだ。
ゲンがシュンにかけよる。「本当に、やるんですか?」
シュンは、何も言わずに歩き出す。
ゲンもそれに合わせて寄り添うように歩き出す。
「あの倉庫、昔から変ですよ、普段はひとけがないのに、たまに武装した人が、うろついているし、
倉庫の外と中じゃ、ゼンゼン違うんですよ!」
全員がエレベータに乗り込んだ、
シュンがポツリと言う。
「あの倉庫の中を見た事あるのか?俺は見てみたい」
高速で降りるエレベータで起こる、耳鳴りがするので、
その後、話は無かった。

その計画とは、こうである。
普段バンドの練習場にしていた、店が取り壊しになったのと、
学校の規則が厳しくなり、世間的にもやりずらくなったので、
倉庫で、練習しようという事になったのだった。

東京湾沿いには、大型の倉庫がひしめいている。
その中には見捨てられたような、ぜんぜん使われていない、
古い倉庫もあり、そんな倉庫が集まっているような所があった。

4人は、目的の倉庫の中にいた。裏口のような扉から素直に入ったのである。
外装からは想像できないほど整ってる。広さはかなりの物で、物を点々と置いているので、迷路のようになっていた。
ゲンが言う
「なんだかドキドキするなー」と愛用のベースを握り締めた。
マサオも言う、
「だからパパのコネを使えば良かったんだ」と白いケースからギターを出しながらグチった。
アキが反論した
「なに言っているのよ、あんな一族が、いちいち応援にこられたら、
恥ずかしくって、しょうがないじゃないー」
アキはドラムなのだが、パーカッションのような、
折りたためて、持ち運べる様に工夫されたデジタル楽器を使う、このころはこれが支流で、
ベースもギターもアンプ内臓の物を皆、使っていた。
余談かもしれないが、アキは元々はベースをやっていて、というよりギターを含めて、
ほとんどをこなす事ができる。
シュンが、口を切った。
「そろそろ、始めようか」
音の調整をそこそこにして、演奏を始めた。
一発めのサウンドが倉庫中の静けさを切り裂いた瞬間、ゾクッとさせた。
怖さを、ふりはらうかのように、演奏は続いた。
ライブハウスとは違う快感があり、皆、最高の笑みを浮かべた、「楽しいー!」
しかし、一瞬にして冷や汗へと変えた。
「何をしている!」
警備員だ、いや少し違う!自衛隊のような格好をしている?!
「おいマジかよ〜、やばいしゃねか〜、逃げろー!○×△」
シュンはダストシートのようなところ(小包などを効率よくトラックなどに乗せるためも物だろう)
を見つけて、滑りおりた。
皆、まねをして外に出て、ばらばらにガムシャラに走って逃げた。
その後を追い、あやしく靴音をたてて迫る恐怖が続いた。

そして気が付くとゲンは真っ暗な部屋の隅で、倒れていた。妙に静かだ。
見回すと、うっすらと明かりが見えた、そこに近づいてみると、暗がりの中に、ぼんやりと
女の子が寝ているように見えた。周りにはメカメカしい機材がならんでいるようだ。
ゲンは目をこらして、前にのりだした瞬間!ボタンを、押してしまったらしく、
照明がつき、女の子を照らす。可愛らしい顔立ちで、小学生ぐらいの体系なのだが、
照明効果も手伝って、目を引き付ける魅力を見せた。
動揺したゲンが言う。
「起こすつもりはなかったんだ!」
その子が、可愛らしい声で問い掛ける。
「あなたは、だれなの?」
更に動揺するゲン。
「あっぁ、元次 元、高校一年、趣味はバンドでベースを弾いていると気持ちいいんだ、
運動も得意、ピーマンが嫌いで…何を言っているんだー?」
我に帰る、ゲン。
少女は、うずくまっている。
「どうしたんだ?」
ゲンは、その子に優しい声をかけた、その瞬間!遠くで爆音が響いた、
地響きが伝わってくる。その子が突然、立ち上がった。背中には、プラグが何本もつながっていた、
それを気にせずにフリチギリ、外へと走り抜けていった。
呆然とする、ゲン。
「ロボット…」
突然、天井のコンクリートが崩れ落ちてきた!
「ワーッ!なんでだよ!!助けてクレー」と、叫びながら必死になって、
少女が走った道をイメージしながら走り続け、大道路にまで出たのだが、

その後は、ゲンにとっては記憶がなく家で、寝かされ丸一日が経っていた。
家といっても一人暮らしの2DKのボロアパートである。
起きて見ると、ゲンの友達のヨシユキが横で寝ていた。ヨシユキがゲンが起きた事に気が付くと、
「偶然、車で通りかかった」とか「死にそうな顔をしていた」とか
「ポケットのカギが」とか、永遠と談義が続き、
「バンドの仲間も皆、無事」とゲンは聞かされた。
夜になると、そのまま飲み会に突入した、ほろ酔い加減のヨシユキは、帰っていった。
酒の弱いゲンにとっては、キツイ!酔っぱらって、
ポテトチップや、イカのゲソや、カップラーメンなどなど、に囲まれて、
死んだように倒れこんでしまった。

「ゲンさま」
ゲンは、可愛らしい声で起こされた。
コンッ、コンッ
部屋のドアをノックする音と、朝の鳥のさえずり。
しかし、ゲンは二日酔いで動けなかった。かなり疲れた声で、
「はい、だれでしょう?二日酔いで、死にそう」と、なにげなく言ったトタンに、
部屋のドアが吹き飛んだ!ゲンは腰を抜かしてしまう。
「たすけてくれー、ごめんなさいー!!」と震え上がっていると、
「だいじょうぶですか?」という、やさしい声。
我に返ると、額を氷枕で冷やしてくれている。
目の前には、あのロボットが居た。
「ごめんなさぁい、わたしが悪いの」と涙を浮かべている。
「そんな事ないよ」と言ってしまうゲン。
なぜか、生臭い。なんと!氷枕だと思ったものが、冷凍イカなど冷凍品を
袋に詰めた物だった!おまけに水道の水は出しっぱなしで水浸しで、
近所のおばさんが、集まってきている。「近頃の子は…」など話しているようだ。
ロボットは、蛇口を閉めようとして慌てて、立ち上がった瞬間に、
おもっきりコケて動けなくなっていた。
ゲンは腰の痛さをこらえながら「なにくっそ〜」と活を入れ、なんとか、近所のおばさん連中を帰らせた。
少しすると、ロボットは正常にもどり、ゲンに自己紹介をした。
「私のコードネームはキー、製造番号はR003T526985です。
あなたは様は私の主として登録されています」と言った。
ゲンは聞いた、「なんでここが解ったんだ?
あっ、あの時、住所も言ったんだけ」と、自分で納得する。(まだ立ち直っていない)
「じゃなくって、君は何者なんだ?」と聞き直した。
「私は、あなた様の助けるプログラムによって行動します」と
無機的に答えた後、玄関に行って、なにやら持ってきた。
それは、ゲンのベースだった。
「ハイッ」さわやかにゲンに笑顔を見せた。
「なんで、持っているんだよ?」
キーは答えた、
「あんなに、これが好きっていてたじゃない」ニコッ

ゲンは考えたすえ、交番に届けようと決める。
夜まで待ち、ゲンは黒いキャップにサングラスという変装をして、
キーを外へ連れ出した。はしゃぐキー。
「こんなに自由に動き回るの初めてなんだー」
「星を見るのも、ひさしぶりだなー」
と言いながら、キーは空を見上げながら歩く。
そして街灯を見て、立ち止まった。
ゲンも街灯を見る。
「そういえば小さかった時は、街灯の綺麗さや電柱の奇妙さが面白くって、
ずーと見ていたころがあったなー」
「キー行くよ」
と声をかける。
「ハイッ」と元気よく答えるキー。

交番の近くまできて、ゲンはキーに一人で行くよう伝えた。
交番に向かって真っ直ぐに歩くキー。交番には怪しい黒ずくめの男が何人かいた。
その一人がキーに気が付き銃を取り出す。
警官がそれに気が付き、取り押さえようとするが、逆に撃たれてしまう。
ゲンもキーを助けるために、飛び出してしまう。
「逃げろ!キー」
銃声で驚いた、野次馬が顔を出したのに気付き、男たちは消えていった。
ゲンとキーも急いで逃げ返えった。


筆者:佐藤 和芳

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これを書いてみて思ったのは、
主人公の名前のゲンというのが、イメージと合わないと、気が付いてしまったー、呼び捨てにすると、
生真面目で、すこし頑固そうで、いい感じかと思うが、キーが呼ぶであろう「ゲンサン」というのは、
かなりイメージ違う。そうだ、「ゲンさま」にしよう。そのうちキャラデザインと一緒に発表する設定だったんですけど、
バンドのドラムのアキの本名は「あき子」でして、この古いイメージのある名前にコンプレックスもっている
という文字を付け足すとイメージが変わるという設定を考えていただけに、気が付かなかったのがクヤシーイ。
名付けの親でもある、おばあさんに育てられたとか、10歳も離れた妹の面倒を見ている、しっかり者だとか
考えています。やっばり、まじめで暗めのストーリーになってしまうのかなー。今後の課題だ。

余談になってしまったが、このページをUPする寸前に、未来の東京湾の情景を考える上で、何かが足りないと、
なかなか思い出せなくって、結局、本文に加えられなかた物をようやく思い出した。「メガフロート」
そういえば、この計画は今はどうなっているんだろう?